イントレランス
Intolerance
(アメリカ 1916)
[製作] D・W・グリフィス
[監督] D・W・グリフィス
[原作・脚本] D・W・グリフィス/トッド・ブローニング/アニタ・ルーズ
[音楽] カール・デイヴィス/ジョゼフ・カール・ブレイル/フェリックス・ギュンター
[撮影] G・W・ビッツァー
[ジャンル] ドラマ
キャスト
オルガ・グレイ (メアリー・マグダレーン)
ミルドレッド・ハリス (ハーレムの女)
ロバート・ハロン (少年)
ジョゼフ・ハナベリー (コリニー)
ロイド・イングラハム (判事)
リリアン・ランドン (母・メアリー)
エルモ・リンカーン (ボディガード)
ハワード・ゲイ (キリスト)
リリアン・ギッシュ
(ゆりかごの女)
ウォルター・ロング (仮面の男)
ベッシー・ラヴ (花嫁)
コンスタンス・タルマッジ
(女)
ダグラス・フェアバンクス
(白い馬の男)
概要
『イントレランス』は、D・W・グリフィス監督による壮大なサイレント映画。
人類史を通じた不寛容の悲劇を描いたオムニバス形式の物語で、4つの異なる時代を交差させながら展開される。革新的な撮影技法とスケールの大きさで映画史に残る作品。
ストーリー
この作品は、人類の歴史を通じて繰り返される「不寛容」とその悲劇をテーマに、4つの異なる時代の物語を並行して描いている。
現代の物語: 現代(1914年)のアメリカを舞台に、若いカップルが悪意と誤解によって引き裂かれる。彼らは労働争議や腐敗した司法制度の犠牲者となり、不寛容な社会の中で苦しむ。
イエス・キリストの時代: イエス・キリストが活動した紀元前の古代イスラエルで、宗教的不寛容が彼の受難と死につながる様子を描く。このエピソードでは、宗教的対立とその悲劇的な結果が強調される。
フランスの宗教戦争: 1572年のフランスで、カトリックとプロテスタントの対立が引き起こすサン・バルテルミの虐殺が描かれる。宗教的不寛容が大量の死者を生み出す悲劇的な出来事である。
古代バビロン: 紀元前539年のバビロンを舞台に、ペルシャの王キュロス大王によるバビロン征服と、それに伴う都市の崩壊を描く。このエピソードでは、政治的および宗教的不寛容が強調されている。
「イントレランス」は、これら4つの物語をクロスカッティング(交差編集)によって交互に展開し、時代と場所を超えた不寛容のテーマを強調する。
グリフィスは、巨大なセットや大規模なエキストラを使用して壮大なビジュアルを作り出し、映画史における技術的な革新を示している。
特に、バビロンの壮大なセットは、映画史上最も壮観なものの一つとされている。
エピソード
制作の背景:
「イントレランス」は、グリフィスの前作「國民の創生」が批判を浴びたことへの応答として制作された。グリフィスは、より大きなテーマを扱い、社会的メッセージを伝えようとした。
セットの豪華さ:
バビロンのシーンでは、巨大なセットが使用され、そのスケールは当時としては画期的だった。バビロンの大門と通りは、映画史に残る壮大なセットデザインの一例。
技術革新:
グリフィスはクロスカッティングの技法を駆使して、異なる物語を並行して進行させる手法を確立した。これにより、映画のテンポと緊張感が劇的に向上した。
映画の長さ:
映画は3時間以上の長編であり、当時の観客にとっては非常に長い上映時間だった。これにより、興行成績には苦戦した。
俳優陣:
リリアン・ギッシュ、メイ・マーシュ、ロバート・ハロンなど、当時のトップスターが多数出演している。彼らの演技が映画のドラマ性を高めている。
商業的失敗:
映画は興行的には失敗し、グリフィスのキャリアに大きな打撃を与えた。しかし、その後の評価で映画史における地位を確立した。
文化的影響:
映画はその後、多くの映画制作者に影響を与え、エピック映画の基礎を築いた。特にクロスカッティングの手法は、多くの映画で模倣された。
保存と修復:
映画は何度も修復され、現代の観客にも鑑賞され続けている。特に、バビロンのシーンの映像美は、今なお圧倒的。
テーマの普遍性:
不寛容というテーマは、時代を超えて多くの人々に共感を呼び続けている。映画が描く人間の本質的な問題は、現代でも同様である。
グリフィスの意図:
グリフィスは、この映画で人間の愚かさと希望を描こうとした。その試みは、多くの批評家や観客に評価され、映画の芸術性を高めている。
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