國民の創生
The Birth of a Nation
(アメリカ 1915)
[製作] H・E・エイケン
[監督] D・W・グリフィス
[原作・脚本] トーマス・F・ディクソン・ジュニア/D・W・グリフィス/フランク・E・ウッズ
[音楽] ジョゼフ・カール・ブレイル/D・W・グリフィス
[撮影] G・W・ビッツァー
[ジャンル] ドラマ
[シリーズ] The Fall of Nation(1916)
キャスト
リリアン・ギッシュ
(エルシー・スタンマン)
メイ・マーシュ (フローラ・キャメロン)
ヘンリー・B・ウォルトホール (ベン・キャメロン大佐)
ミリアム・クーパー (マーガレット・キャメロン)
メアリー・アルデン (リディア・ブラウン)
ラルフ・ルイス (オースティン・スタンマン)
ジョージ・シーグマン (サイラス・リンチ)
ウォルター・ロング (ガス)
ロバート・ハロン (トッド・スタンマン)
ウォレス・ライド (ジェフ)
ジョゼフ・ハナベリー (エイブラハム・リンカーン)
エルマー・クリフトン (フィル・スタンマン)
ジョセフィーヌ・クロウェル (キャメロン夫人)
スポッティスウッド・エイケン (ドクター・キャメロン)
ジョージ・ベレンジャー (ウェイド・キャメロン)
マックスフィールド・スタンリー (デューク・キャメロン)
ジェニー・リー (マミー)
ラウル・ウォルシュ (ジョン・ワイクス・ブース)
概要
『國民の創生』は、D・W・グリフィス監督によるサイレント映画で、アメリカ映画史において技術的、構造的な革命をもたらした作品。南北戦争とその後の南部再建時代を背景に、2つの家族の物語を通じて社会と人種の問題を描く。ただし、内容の人種差別的な描写は公開当時から議論を呼び、現在でも批判の的となっている。
ストーリー
「國民の創生」は、アメリカ南北戦争とその後の復興時代を描いた物語。映画は、キャメロン家とスタンマン家という二つの家族を中心に展開する。
第1部:南北戦争
キャメロン家は南部の裕福な農園主で、ストンマン家とは親しい友人関係にある。だが、戦争が勃発し、家族の間に亀裂が生じる。キャメロン家の長男ベンは、南軍の兵士として戦い、戦争の悲惨さを目の当たりにする。戦争は南部の敗北に終わり、キャメロン家は荒廃した故郷で再建を試みる。
第2部:南部再建時代
戦後、南部は混乱に陥り、黒人解放とともに新たな緊張が生じる。映画は、白人南部人たちが黒人を抑圧し、政治的支配を取り戻すために結成したクー・クラックス・クラン(KKK)を英雄的に描く。キャメロン家のベンはKKKのリーダーとなり、家族や地域社会を守るために立ち上がる。最終的にKKKが「秩序を回復」するという形で映画は幕を閉じる。
エピソード
- 映画は、クロスカッティング、クローズアップ、パンショットなど、数多くの革新的な映画技術を導入し、映画製作の標準を大きく進化させた。
- 「國民の創生」は、当時の標準を超える3時間以上の長編映画であり、観客の期待を大きく超える壮大なスケールで制作された。
- 映画は、その人種差別的な描写とKKKを英雄的に描く内容が大きな論争を巻き起こした。NAACP(全米黒人地位向上協会)などの団体は映画の上映禁止を求めた。
- 映画は興行的に大成功し、数百万ドルの収益を上げた。これは、当時の映画としては異例の成功であり、グリフィスの名声を確立した。
- エイブラハム・リンカーンの暗殺シーンは、そのリアリズムと緊張感で多くの観客に衝撃を与えた。
- リリアン・ギッシュは、映画での演技が高く評価され、彼女のキャリアを大きく前進させた。
- グリフィスは後に、自身の作品が引き起こした論争と批判に対して深い後悔を表明し、次作「イントレランス」で和解と寛容のテーマを追求した。
- 「國民の創生」は、映画史の重要な作品として何度も修復され、現在でも研究対象となっている。
- 映画の技術的革新は、後の多くの映画製作に影響を与えた。しかし、その内容は人種差別的であり、現在では多くの批判を受けている。
- 今日では、映画は技術的な革新を評価される一方で、その内容が持つ歴史的背景と社会的影響を理解するための教育的価値も持っている。
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