フレドリック・マーチ
Fredric March
1897年8月31日、アメリカ・ウィスコンシン・ラシーン生まれ。
1975年4月14日、アメリカ・カリフォルニア・ロサンゼルスで死去(前立腺癌)。享年77歳。
本名アーネスト・フレデリック・マッキンタイア・ビッケル(Ernest Frederick McIntyre Bickel)。
24歳の時エキストラとしてスクリーン・デビュー。
トーキー映画初期のスター。
フレドリック・マーチは、アメリカの俳優で、ハリウッド黄金期から戦後にかけて活躍した名優の一人だ。舞台と映画の両方で成功を収め、アカデミー賞を2度受賞したほか、トニー賞も受賞しており、その多才さと演技力で知られている。マーチは映画の初期からトーキー時代にかけてキャリアを築き、リアリズムと深い感情表現を重視した演技で観客を魅了した。
フレドリック・マーチはウィスコンシン州ラシーンで生まれ、大学卒業後に銀行業界で働いていたが、盲腸炎の手術を機に人生を見直し、俳優の道を志すようになった。ニューヨークで舞台俳優としてキャリアをスタートし、1920年代後半から映画にも出演するようになる。
1930年代初頭、ハリウッドのトーキー映画が隆盛する中でその才能が認められ、すぐに主演級の俳優としての地位を確立した。
1931年には、『ジキル博士とハイド氏』で主演し、この作品でアカデミー主演男優賞を受賞した。彼の二重人格の演技は高く評価され、その後のキャリアの基礎を築いた。
マーチのキャリアは多岐にわたり、1930年代から1950年代にかけて数多くの映画で主役を務めた。彼の代表作には、『無責任時代』(1937年)、『我等の生涯の最良の年』(1946年)などがある。
特に『我等の生涯の最良の年』では、第二次世界大戦から帰還した退役軍人を演じ、再びアカデミー主演男優賞を受賞した。この作品は戦後のアメリカ社会を描いた感動的なドラマであり、マーチの演技はその中心的な要素となった。
マーチは舞台俳優としても名声を博し、1956年にはユージン・オニールの戯曲「Long Day’s Journey Into Night」の舞台版でトニー賞を受賞している。映画と舞台を行き来することで、彼の演技は常に深い感情とリアリズムを保ち、観客に感動を与えた。
「フレドリック・マーチ」という芸名は、本名であるフレデリック・マクインタイア・ビックルの簡略形として作られた。
1931年、マーチは女優フローレンス・エルドリッジと結婚。この結婚は彼の死まで続き、二人はしばしば舞台や映画で共演するなど、良好なパートナーシップを築いていた。
マーチは俳優としての才能だけでなく、知的で社交的な性格でも知られており、多くの俳優や監督から尊敬を集めていた。一方で、映画界での過度な商業主義には批判的で、芸術性を重視する姿勢を貫いた。
1950年代以降は映画出演を減らし、舞台やテレビドラマを中心に活動を続けた。1975年、ニューヨークで前立腺癌により77歳で死去。その死は、映画界にとって大きな損失となった。
フレドリック・マーチは、その多才な演技力と幅広い役柄で、ハリウッド黄金時代の映画界において重要な存在であった。彼の作品は今なお多くの映画ファンに愛され続けており、映画史に深く刻まれている。
[出演作品]
1921 24歳
浮世を茶にして The Great Adventure
1929 32歳
ワイルド・パーティ The Wild Party
撮影所殺人事件 The Studio Murder Mystery
嫉妬 Jealousy
1930 33歳
サラアとその子 Sarah and Son
パラマウント・オン・パレイド Paramount on Parade
踊子夫人 Laughter
名門芸術 The Royal Family of Broadway
1931 34歳
夜の天使 The Night Angel
私の罪 My Sin
ジキル博士とハイド氏 Dr. Jekyll and Mr. Hyde
アカデミー賞主演男優賞
ヴェネツィア国際映画祭男優賞
1932 35歳
借りた人生 Strangers in Love
我等は楽しく地獄へ行く Merrily We Go to Hell
永遠に微笑む Smilin’ Through
暴君ネロ The Sign of the Cross
1933 36歳
鷲と鷹 The Eagle and the Hawk
生活の設計 Design for Living
1934 37歳
わたしの凡てを All of Me
明日なき抱擁 Death Takes a Holiday
白い蘭 The Barretts of Wimpole Street
復活 We Live Again
1935 38歳
ダアク・エンゼル The Dark Angel
アンナ・カレニナ Anna Karenina
噫無情 Les Miserables
1936 39歳
永遠の戦場 The Road to Glory
風雲児アドヴァース Anthony Adverse
メアリー・オブ・スコットランド Mary of Scotland
1937 40歳
スタア誕生 A Star Is Born
無責任時代 Nothing Sacred
1938 41歳
海賊 The Buccaneer
貿易風 Trade Winds
1941 44歳
我が道は遠けれど One Foot in Heaven
1942 45歳
奥様は魔女 I Married a Witch
1946 49歳
我等の生涯の最良の年 The Best Years of Our Lives
アカデミー賞主演男優賞
1949 52歳
コロンブスの探険 Christopher Columbus
1951 54歳
セールスマンの死 Death of a Salesman
ヴェネツィア国際映画祭男優賞
ゴールデン・グローブ賞主演男優賞
1953 56歳
綱渡りの男 Man on a Tightrope
1954 57歳
重役室 Executive Suite
1955 58歳
トコリの橋 The Bridges at Toko-ri
必死の逃亡者 The Desperate Hours
1956 59歳
アレキサンダー大王 Alexander the Great
灰色の服を着た男 The Man in the Gray Flannel Suit
1959 62歳
真夜中 Middle of the Night
1960 63歳
風の遺産(聖書への反逆) Inherit the Wind
ベルリン国際映画祭男優賞
1961 64歳
若き医師たち The Young Doctors
1963 66歳
アルトナ I sequestrati di Altona
五月の七日間 Seven Days in May
1967 70歳
太陽の中の対決 Hombre
1970 73歳
…チック…チック…チック …tick… tick… tick…
1973 76歳
氷人来たる The Iceman Cometh
コメント