聖処女
The Song of Bernadette
(アメリカ 1943)
[製作] ウィリアム・パールバーグ
[監督] ヘンリー・キング
[原作] フランツ・ウェルフェル
[脚本] ジョージ・シートン
[撮影] アーサー・C・ミラー
[音楽] アルフレッド・ニューマン
[ジャンル] ドラマ
[受賞]
アカデミー賞 主演女優賞(ジェニファー・ジョーンズ)/美術監督賞/撮影賞/作曲賞
ゴールデン・グローブ賞 監督賞/作品賞/主演女優賞(ジェニファー・ジョーンズ)
ジェニファー・ジョーンズ
(ベルナデット)
ウィリアム・エイス (アントワーヌ・ニコラウ)
チャールズ・ビックフォード (ディーン)
ヴィンセント・プライス
(ヴィタル)
リー・J・コッブ (Dr.ドズー)
グラディス・クーパー (シスター・マリー・テレーズ)
アン・リヴェア (ルイーズ)
ローマン・ボーネン (フランソワ)
メアリー・アンダーソン (ジャンヌ)
パトリシア・モリソン (ユージニー女帝)
オーブリー・メイサー (アルフォンス)
『聖処女』は、1943年に公開されたアメリカの宗教ドラマ映画。監督はヘンリー・キングで、主演はジェニファー・ジョーンズ。映画は、19世紀フランスの小さな村ルルドで、少女ベルナデット・スビル(ジェニファー・ジョーンズ)が聖母マリアの幻視を体験し、その後の彼女の人生と信仰の道を描いている。映画は、ベルナデットが体験した18回の幻視を中心に、彼女がどのようにして聖人としての地位を確立していくかを感動的に描写している。
物語は、1858年のフランス・ルルドで、貧しい家庭に生まれた14歳の少女ベルナデット・スビルが、ゴミ捨て場近くの洞窟で「美しい貴婦人」(聖母マリア)の幻視を経験するところから始まる。ベルナデットは、この幻視を家族や村人に伝えるが、彼女の言葉は当初、村の人々や宗教指導者たちから疑念を持って受け取られる。
中盤では、ベルナデットが幻視を重ねるごとに、村全体がその信憑性を巡って分裂していく。宗教当局や政府高官たちは、彼女の主張が村を混乱させることを恐れ、彼女を追い詰めようとするが、ベルナデットは自らの信仰を貫き続ける。
ジェニファー・ジョーンズのキャリアを決定づけた役:
ジェニファー・ジョーンズは、この映画でのベルナデット役でアカデミー主演女優賞を受賞し、一躍スターの座に上り詰めた。彼女はこの役のために約200人の候補者の中から選ばれ、監督ヘンリー・キングの下で厳しい演技指導を受けた。
宗教と映画の融合:
映画の冒頭には、「神を信じる者には説明は不要、神を信じない者には説明は不可能」というメッセージが表示されている。これは、映画のテーマが宗教的であることを強調し、観客に信仰の視点から映画を受け止めるよう促すためのものである。
撮影秘話:
当初、映画の音楽を担当する予定だったのは有名作曲家のイーゴリ・ストラヴィンスキーだったが、彼の参加は実現せず、最終的にアルフレッド・ニューマンが担当し、彼のスコアはアカデミー賞を受賞した。
歴史的な不正確さ:
映画はフランツ・ヴェルフェルの小説を原作としているが、いくつかの歴史的事実と異なる点がある。例えば、ベルナデットの友人アントワーヌとの関係や、政府関係者の宗教に対する態度が実際よりも誇張されて描かれている。
映画の制作背景:
映画は第二次世界大戦中に製作されたが、ルルドの洞窟や村のシーンはハリウッドのスタジオで再現された。そのリアルなセットと撮影技術により、視覚的にも美しい作品に仕上がっている。
視覚効果と撮影技術:
幻視のシーンで使われた視覚効果は、当時の技術としては画期的であり、観客に強い印象を与えた。特に、ベルナデットが聖母マリアを目にする場面は、映画の中でも最も象徴的なシーンの一つとして知られている。
『聖処女』は、その宗教的テーマと感動的なストーリー展開で観客を魅了した。ジェニファー・ジョーンズの演技は特に高く評価され、彼女の純粋で無垢な表情が、ベルナデットというキャラクターに真実味と神聖さを与えている。映画は、信仰の力とそれが人々の生活に与える影響を丁寧に描写しており、宗教映画の名作として位置づけられている。
しかし、映画が持つ強い宗教的メッセージに対しては、当時も現在も賛否が分かれており、特にその感傷的な描写や、史実との食い違いについての批判も存在する。それでも、『聖処女』はアメリカ映画史における重要な作品であり、その芸術的価値と文化的影響は今もなお評価されている。
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