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ギルダ Gilda 1946 |キャスト・あらすじ【ネタバレ】

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漆黒のドレスに宿る魔性と、愛憎が渦巻くカジノの夜。リタ・ヘイワースが銀幕の女神となった、フィルム・ノワールの至宝。

アルゼンチンのカジノを舞台に、支配人の右腕となった男と、かつて彼を捨てた魔性の女ギルダが再会する。手袋を脱ぎ捨てる仕草一つで世界を虜にしたリタ・ヘイワースの圧倒的な官能美。愛と憎しみ、そして支配欲が交錯する、フィルム・ノワール史上最も華麗で危険な三角関係のドラマ。


ギルダ
Gilda
(アメリカ 1946)

[製作] ヴァージニア・ヴァン・アップ
[監督] チャールズ・ヴィダー
[原作] E・A・エリントン/ジョー・アイジンガー
[脚本] マリオン・パーソネット
[撮影] ルドルフ・マテ
[音楽] M・W・ストロフ/マーティン・スキルズ
[ジャンル] クライム/ドラマ

キャスト

リタ・ヘイワース
(ギルダ)

グレン・フォード
(ジョニー・ファレル/ナレーター)


ジョージ・マクレディ (バリン・マンソン)
ジョゼフ・カライア (モーリス・オブレゴン刑事)
スティーヴン・ゲレイ (ピオ叔父)
ジョー・ソーヤー (ケイシー)
ジェラルド・モア (デルガード)
ロバート・E・スコット (ゲイブ・エヴァンス)

受賞・ノミネートデータ

受賞年部門結果
1946第1回カンヌ国際映画祭パルム・ドール(作品賞)ノミネート
2013アメリカ国立フィルム登録簿文化的・歴史的・審美的に重要新規登録

評価

「愛しているからこそ憎む」というノワール特有の歪んだ情熱を、これほどまでに美しく、そして退廃的に描き出した作品はありません。名撮影監督ルドルフ・マテが捉えるリタ・ヘイワースの「光と影」は、彼女を単なる女優から不滅のアイコンへと昇華させました。

ヒューゴー・フリードホーファーの劇伴と、劇中で歌われる「プット・ザ・ブレイム・オン・メイム」の扇情的な響き。脚本に秘められた男性同士の奇妙な連帯感や独占欲といった多層的な心理描写も相まって、今なお世界中のファンを魅了し続けています。


あらすじ:再会は死の香りを纏って

アルゼンチンのブエノスアイレス。いかさま博打で食いつないでいたジョニー(グレン・フォード)は、カジノの支配人マンソン(ジョージ・マクレディ)に命を救われ、彼の右腕として信頼を得る。しかし、マンソンが旅先から連れ帰った新しい妻ギルダ(リタ・ヘイワース)を見た瞬間、ジョニーの心は凍りつく。彼女はかつてジョニーを裏切り、深く傷つけた元恋人だった。

マンソンから「妻を見張れ」と命じられたジョニーは、ギルダへの憎しみを募らせながら彼女を監視するが、彼女もまたジョニーを挑発し、他の男たちとの浮名を流して彼を翻弄する。

一方で、マンソンにはナチスの残党が絡む国際的なタングステン独占計画という裏の顔があった。愛憎の火花が散る中、マンソンの失踪という予期せぬ事態が彼らの運命を加速させていく。


マンソンは自らの死を偽装して姿を消し、ジョニーはギルダと結婚してカジノを継承する。しかし、それは愛のためではなく、自分を捨てた彼女を束縛し、復讐するための残酷な「監禁」だった。絶望したギルダはカジノのステージで「私を責めて(Put the Blame on Mame)」を歌い、手袋を脱ぎ捨てるストリップ・パフォーマンスでジョニーを激しく挑発する。

そこへ死んだはずのマンソンが姿を現し、裏切り者の二人を殺そうとするが、カジノの従業員に刺されて今度こそ命を落とす。互いに傷つけ合うことでしか愛を確認できなかったジョニーとギルダは、刑事モーリス(ジョセフ・キャレイア)の言葉によって、ようやく過去の呪縛から解放される。二人は積年の憎しみを捨て、本当の自分たちを取り戻すために、ブエノスアイレスを離れてアメリカへと帰る決意をするのだった。



エピソード・背景

  • リタ・ヘイワースの絶頂期
    本作で彼女が着用した黒いサテンのドレスは、映画史上最も有名な衣装の一つ。彼女はこの役のイメージがあまりに強烈だったため、「男たちはギルダと寝て、私(リタ)と目覚めて失望する」という有名な言葉を遺しています。
  • ルドルフ・マテの陰影
    後に監督としても成功するマテは、ギルダの登場シーンで彼女の髪を振り乱すスローモーションや、カジノの冷徹な光を完璧に制御し、ノワールの視覚美を確立しました。
  • グレン・フォードの屈折した魅力
    誠実なヒーロー役が多い彼が、本作では嫉妬と憎悪に歪む男を演じ、リタとの間に「スクリーン上で最も火花が散るコンビ」と称されるほどの化学反応を起こしました。
  • ジョージ・マクレディの冷徹さ
    仕込み杖を持つ支配人マンソン。彼の冷酷な佇まいは、物語に不穏なサスペンスと、ジョニーに対する奇妙な執着を感じさせます。
  • 「プット・ザ・ブレイム・オン・メイム」
    リタが歌うこの曲は、実際にはアニタ・エリスによる吹き替えですが、リタの完璧なリップシンクとパフォーマンスによって、映画史に残るミュージカル・シーンとなりました。
  • 検閲との戦い
    当時の厳しいヘイズ・コード(自主規制)の下で、性の欲求や暴力の暗示を、手袋を脱ぐ仕草や台詞の裏側に隠して表現した演出は、極めて独創的と評価されています。
  • 原爆との奇妙な縁
    公開直後のビキニ環礁での原爆実験において、爆弾に「ギルダ」の名とリタの写真が描かれていたという逸話があり、彼女が「アトミック・ブロンド」と呼ばれる所以となりました。

まとめ:作品が描いたもの

『ギルダ』は、表面上はスリリングな犯罪映画の形をとりながら、その実体は「抑圧された情熱と支配欲」を描いた心理ドラマです。ギルダという女性が放つ眩いばかりの光は、同時に男たちの心の暗部を照らし出し、嫉妬という名の檻に彼らを閉じ込めました。

ラストで二人が共に歩み出す姿は、フィルム・ノワールとしては異例の救いを感じさせますが、それまでの凄惨な愛憎劇があるからこそ、その静かな結末が際立ちます。この作品は、美しさが武器にもなり、また呪いにもなるという残酷な真実を、至高のスタイリッシュな映像によって銀幕に焼き付けた、映画表現の一つの頂点と言えるでしょう。


〔シネマ・エッセイ〕

ルドルフ・マテが捉える、カジノの硬質な輝き。その中で、リタ・ヘイワースが髪を大きく振りかぶって登場する瞬間、映画館の空気は一変します。ヒューゴー・フリードホーファーの音楽が、逃れられない運命の足音のように響く中、私たちは彼女の瞳の奥に、愛を渇望しながらも男たちを拒絶する孤独を見てしまいます。

グレン・フォードが、憎しみという仮面を被って彼女を追い詰める姿。それは、失うことを恐れるあまりに相手を壊そうとする、人間の最も醜く、かつ切実な本能です。彼女が手袋を一本ずつゆっくりと脱いでいくとき、それは服を脱ぐことよりも遥かに官能的で、観る者の倫理観を静かに打ち砕いていきます。

「ギルダ、家に帰ろう」。その最後の一言が、すべての暴力と憎しみを溶かしていく。映画が終わった後も、私たちの心には、漆黒のドレスを纏った彼女の残像と、愛という名の嵐が過ぎ去った後の、どこか清々しい寂しさが残り続けるのです。

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