スミス都へ行く
Mr. Smith goes to Washington
(アメリカ 1939)
[製作] フランク・キャプラ
[監督] フランク・キャプラ
[原作] ルイス・R・フォスター
[脚本] シドニー・バックマン
[撮影] ジョゼフ・ウォーカー
[音楽] ディミトリー・ティオムキン
[ジャンル] ドラマ
[受賞]
アカデミー賞 オリジナル脚本賞
NY批評家協会賞 主演男優賞(ジェームズ・スチュワート)
キャスト
ジーン・アーサー
(クラリッサ・サンダース)
ジェームズ・スチュワート
(ジェファーソン・スミス)
クロード・レインズ (ジョゼフ・ハリソン・ペイン上院議員)
エドワード・アーノルド (ジム・テイラー)
ガイ・キビー (ハバート・‘ハッピー’・ホッパー)
トーマス・ミッチェル (ディズ・ムーア)
ユージーン・パレット (チック・マクガン)
ベラ・ボンディ (スミス夫人)
ハリー・ケリー (上院議長)
概要
『スミス都へ行く(Mr. Smith Goes to Washington)』は、フランク・キャプラ監督による政治ドラマ。ジェームズ・スチュワート主演で、政治の腐敗と若き理想主義者の奮闘を描いた物語。地方出身の純朴な男が上院議員となり、政治の裏側に直面しながらも信念を貫く姿が感動的な名作。
ストーリー
地方のボーイスカウト団体を率いる青年ジェファーソン・スミス(ジェームズ・スチュワート)は、急逝した地元議員の後任として上院議員に任命される。彼は純朴で理想主義的な性格から地元住民に愛されていたが、政界の駆け引きとは無縁の人物だった。スミスは初めて訪れたワシントンD.C.の壮大さに感激し、政治に希望を見出そうとする。
スミスは、地元の子供たちのためにキャンプ場を設立する法案を提案するが、その土地が裏で地元の権力者テイラーによる鉄道事業計画に絡んでいることを知らされる。スミスの同僚で師匠的存在のジョセフ・ペイン上院議員も、この計画に深く関与していた。純粋なスミスの提案は、彼らにとって邪魔な存在となり、ペインらはスミスを貶めるために彼を汚職の濡れ衣で陥れようとする。
スミスは自分が罠にはめられたことを知りながらも、信念を貫き、議会での長時間のフィリバスター(議事妨害演説)を通じて、自らの無実と真実を訴え続ける。彼の情熱的で誠実な姿勢は、一部の議員や国民の心を動かし、腐敗した政治体制に対する疑問を投げかける。
エピソード
- 映画は11部門にノミネートされ、フランク・キャプラが監督賞を受賞した。
- スチュワートの演技は高く評価され、彼のキャリアの中で最も象徴的な役柄の一つとなった。
- 撮影には実際の上院議会のセットを忠実に再現し、当時の観客を驚かせた。
- 映画は、政治腐敗と市民の責任についての強いメッセージを含んでおり、公開当初から物議を醸した。
- フランク・キャプラ監督は、アメリカの理想と政治の現実のギャップを描くことを目指していた。
- スチュワートの長い演説シーンは、彼の実際の声を疲労させるほどの長時間にわたって撮影された。
- スミスが観光するモニュメントのシーンは、スチュワートの自然なリアクションを捉えるため、実際の初訪問時に撮影された。
- 政治家やメディアからの批判もあったが、映画は一般観客からの支持を受け、大ヒットとなった。
- フランク・キャプラは、この映画を通じてアメリカの民主主義の力と市民の重要性を強調したかったと語っている。
- 実際のワシントンD.C.での撮影はほとんど行われず、スタジオセットで多くのシーンが再現された。
- 映画はコメディとドラマの要素をバランス良く組み合わせており、軽妙なタッチが重いテーマを和らげている。
- 映画は、その時代の政治風刺として批評家からも高く評価され、今なお重要な作品とされている。
- 映画は、その政治的な内容のため、いくつかの国で上映禁止となった。
- ジェームズ・スチュワートは、これが生涯に一度の役であり、ハリウッドの頂点に近づくことができる役だとわかっていた。ジーン・アーサーは後に、当時の彼の心境を次のように回想している。「彼はこの映画の撮影中、とても真剣で、朝 5 時に起きて自分で車を運転してスタジオまで行った。何か起きるのではないかととても恐れていたので、スピードを出さなかった。」
- フランク・キャプラは、この映画に感化されて政治活動を始めた人々から、長年にわたり多くの手紙を受け取っていた。
- ジーン・アーサーの左側は彼女の一番美しい側面と考えられていたため、彼女が登場する時はいつでもその側で撮影されるようにセットを製作する必要があった。
- アカデミー助演男優賞に2部門ノミネートされた最初の映画。クロード・レインズとハリー・ケリーがともにノミネートされたが、2人とも共演者で『駅馬車』でノミネートされていたトーマス・ミッチェルに敗れた。
- クロード・レインズが演じたペイン上院議員は、「善人が悪に染まる」という複雑なキャラクターとして高く評価された。
『スミス都へ行く』は、フランク・キャプラの監督としての手腕とジェームズ・スチュワートの魅力的な演技が光る作品であり、アメリカ映画のクラシックとして広く認知されている。映画は、正義感と理想主義を持つ若者が政治の腐敗に立ち向かうという普遍的なテーマを扱い、観客に感動と共感を与えた。軽妙なユーモアと深刻なドラマの絶妙なバランスが、この映画を単なる政治ドラマ以上のものにしており、時代を超えて愛される作品となっている。
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