エレファント
Elephant
(アメリカ 2003)
[製作総指揮] ダイアン・キートン/ビル・ロビンソン
[製作] ローラ・アルバート/ジェイ・ヘルナンデス/ダニー・ウルフ
[監督] ガス・ヴァン・サント
[脚本] ガス・ヴァン・サント
[撮影] ハリス・サヴィデス
[ジャンル] クライム/ドラマ
[受賞]
カンヌ映画祭 パルムドール/監督賞/フランス国立教育システム映画賞
フランス映画評論家協会賞 外国映画賞
ニューヨーク映画批評家協会賞 撮影監督賞
キャスト
アレックス・フロスト (アレックス)
エリック・デューレン (エリック)
ジョン・ロビンソン (ジョン・マクファーランド)
イライアス・マコーネル (イーライ)
ジョーダン・テイラー (ヨルダン)
キャリー・フィン (キャリー )
ニコール・ジョージ (ニコール)
ブリタニー・マウンテン (ブリタニー)
アリシア・マイルズ (アカディア)
クリステン・ヒックス (ミシェル)
ベニー・ディクソン (ベニー)
ネイサン・タイソン (ネイサン)
ティモシー・ボトムズ
(マクファーランド氏)
マット・マロイ (ルース)
概要
『エレファント』は、ガス・ヴァン・サントが監督を務めた実験的なドラマ映画。
アメリカの高校で起きた銃乱射事件を題材に、加害者、被害者、そしてその周囲の人々の日常を断片的に描く。
特定の事件を直接モデルにしたわけではないが、1999年のコロンバイン高校銃乱射事件が強く反映されている。静かで詩的な映像と非線形の語り口が特徴で、第56回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールと監督賞を受賞した。
ストーリー
映画は、オレゴン州の架空の高校を舞台に、普通の一日を過ごす生徒たちの生活を追う。物語は非線形で、複数の視点から同じ時間軸の出来事を繰り返し描く。
ジョン(ジョン・ロビンソン)は、父親を車で学校に送り届けた後、キャンパス内を歩きながら友人たちと会話を交わす。
イーライ(イライアス・マッコーネル)は、写真を趣味とする少年で、校内を歩きながら友人たちをカメラで撮影する。
アレックス(アレックス・フロスト)とエリック(エリック・デューレン)は、引きこもりがちな友人同士であり、自宅で銃器を組み立て、学校での襲撃を計画している。
映画は、生徒たちの日常をゆったりとしたテンポで描写しながら、彼らの生活や関係性の細部に焦点を当てる。一見何の変哲もない彼らの生活が、突如として暴力的な惨劇に変わる。
物語の終盤、アレックスとエリックは重武装して学校に侵入し、無差別に銃を乱射する。生徒たちは恐怖に怯え、校内は混乱に陥る。加害者たちの行動に理由や動機が直接語られることはなく、事件の後の余韻を残して映画は静かに幕を閉じる。
エピソード
- 登場人物を演じたほとんどが演技経験のない高校生であり、ガス・ヴァン・サントはリアリティを追求するために、素人俳優を使った。
- 脚本の多くは即興で進められ、キャストたちには自由にセリフを話させることで、自然な日常感を生み出している。
- タイトルの「エレファント」は、解釈に幅がある。中でも「部屋の象」(タブーや無視されている問題)や、アラン・クラーク監督の短編映画『エレファント』にインスパイアされたとされる。
- 映画全体でロングテイクを多用し、登場人物の動きを追い続けることで、観客に没入感を与えている。
- 映画は特定の事件を基にしていないが、コロンバイン高校銃乱射事件を強く連想させ、多くの議論を呼んだ。
- ガス・ヴァン・サントは、撮影中に脚本を変更したり、キャストの提案を取り入れるなど、即興的な手法を採用した。
- オレゴン州ポートランドにあるウィットフォード中学校を高校として撮影に使用し、リアルな校内の雰囲気を再現した。
- 映画の大部分は静寂が支配しているが、バッハの音楽や登場人物が弾くピアノの旋律が挿入され、詩的な雰囲気を醸し出している。
- 予算とスケジュールの都合上、わずか20日間で撮影が行われた。
- その実験的なアプローチが絶賛される一方で、暴力の描写に対しては「具体的な解決策を提示していない」という批判も受けた。
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