ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録
Hearts of Darkness: A Filmmaker’s Apocalypse
(アメリカ 1991)
[製作総指揮] ダグ・クレイボーン/フレッド・ルース
[製作] レス・メイフィールド/ジョージ・ザルーム
[監督] エレノア・コッポラ/ファクス・バー/ジョージ・ヒッケンルーパー
[原作] エレノア・コッポラ/ファクス・バー/ジョージ・ヒッケンルーパー
[脚本] ファクス・バー/ジョージ・ヒッケンルーパー
[撮影] ラリー・カーニー/イゴール・メグリック/スティーヴン・ワックス
[音楽] トッド・ボーケルハイド/カーマイン・コッポラ/フランシス・フォード・コッポラ/ミッキー・ハート
[ジャンル] ドキュメンタリー
[受賞]
ナショナル・ボード・オブ・レビュー ドキュメンタリー作品賞
NY映画批評家協会賞 ノンフィクション賞
エミー賞 ドキュメンタリー・特別番組賞/編集賞
キャスト
エレノア・コッポラ
ローレンス・フィッシュバーン
(タイロン・ミラー/クリーン)
サム・ボトムズ
フレデリック・フォレスト
(ジェイ・ヒックス)
デニス・ホッパー
(フォトジャーナリスト)
オーソン・ウェルズ (声)
概要
『ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録』(Hearts of Darkness: A Filmmaker’s Apocalypse)は、フランシス・フォード・コッポラが『地獄の黙示録』を制作する過程で直面した、壮絶な挑戦と困難を記録したドキュメンタリー映画。
監督はエレノア・コッポラ(コッポラの妻)、ジョージ・ヒッケンルーパー、フェイックス・カーズ。撮影現場の未公開映像やコッポラ夫妻のインタビューを交え、映画制作の裏に隠された狂気、挫折、そして情熱を描き出す。
ストーリー
『地獄の黙示録』の制作は、1970年代後半、フィリピンで行われた。フランシス・フォード・コッポラはこの作品に自らのキャリアを賭け、全てを捧げて臨む。しかし、制作の初期段階から困難が相次ぐ。主演予定だったハーヴェイ・カイテルの降板、代役として起用されたマーティン・シーンの心臓発作、撮影地フィリピンでの台風によるセットの壊滅など、プロジェクトは次々とトラブルに見舞われる。
さらに、カーツ大佐役のマーロン・ブランドが脚本を読まずに撮影に臨んだことや、彼の肥満体型が問題視され、コッポラはストーリーを即興で変更せざるを得なかった。また、フィリピン政府との交渉によるヘリコプターの提供や、現地の社会情勢も複雑な影響を及ぼした。
映画制作が困難を極める中、コッポラ自身も精神的に追い詰められ、「映画の完成はおろか、自分のキャリアが終わるのではないか」という不安と戦う日々が続く。一方で、妻エレノアはカメラを回し続け、制作現場の混乱と狂気を忠実に記録していく。
ドキュメンタリーは、コッポラがいかにしてこの「映画ではなく経験だ」とまで言わしめる作品を完成させたか、その過程を赤裸々に映し出す。
エピソード
- 夫フランシスの制作現場を客観的に捉えたエレノアの映像は、映画の核心を描く重要な要素となった。
- コッポラは『地獄の黙示録』の制作を「戦争そのもの」と例え、困難が続く撮影に対する苦悩を率直に語った。
- 心臓発作で倒れたシーンは、撮影に復帰するまでの間、映画の進行が一時ストップ。彼の回復がなければプロジェクトが破綻する危機もあった。
- ブランドの即興演技や撮影への準備不足は、コッポラとの間に緊張を生んだが、最終的に彼の存在感がキャラクターに深みを与えた。
- フィリピンでの撮影は、現地住民やエキストラの協力なしには成り立たなかった。特にヘリコプターの使用交渉はフィリピン政府との長期的な協議を要した。
- 当初の予算を大幅に超えた結果、コッポラは自身の財産を担保にして制作費を賄った。
- 台風によるセットの損壊で、重要なシーンの撮影が何度も延期され、俳優やスタッフの間で緊張が高まった。
- コッポラは状況に応じて脚本を即興で変更し、物語の方向性を常に模索し続けた。
- ジム・モリソン率いるドアーズの楽曲「The End」がオープニングに使われるアイデアも、制作過程で生まれたものだった。
- 撮影時の混乱を経て完成した『地獄の黙示録』は、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。混乱の中から生まれた傑作として称賛された。
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