マイ・プライベート・アイダホ
My Own Private Idaho
(アメリカ 1991)
[製作総指揮] アラン・ミンデル
[製作] ローリー・パーカー/アンソニー・ブランド
[監督] ガス・ヴァン・サント
[原作] ウィリアム・シェイクスピア「ヘンリー四世」
[脚本] ガス・ヴァン・サント
[撮影] ジョン・J・キャンベル/エリック・アラン・エドワーズ
[音楽] ビル・スタフォード
[ジャンル] ドラマ
[受賞]
トロント国際映画祭 国際批評家連盟賞
ヴェネツィア映画祭 主演男優賞(リヴァー・フェニックス)
ロサンゼルス映画批評家協会賞主演男優賞(リヴァー・フェニックス)
キャスト

リヴァー・フェニックス
(マイク・ウォーターズ)

キアヌ・リーヴス
(スコット・フェイヴァー)

ジェームズ・ルッソ
(リチャード・ウォーターズ)
ウィリアム・リチャート (ボブ・ピジョン)
ロドニー・ハーヴェイ (ゲイリー)

キアラ・カゼッリ
(カーミラ)
マイケル・パーカー (男)
ジェシー・トーマス (デニース)
フレア (バド)
グレイス・ザブリスキー (アリーナ)
トム・トループ (ジャック・フェイヴァー)

ウド・キアー
(ハンス)

ジェームズ・カヴィーゼル
(航空会社受付)
概要
『マイ・プライベート・アイダホ』(My Own Private Idaho)は、ガス・ヴァン・サント監督による1991年のロードムービー。シェイクスピアの『ヘンリー四世』を下敷きに、ストリートで生きる青年たちの放浪と孤独を描く。主演はリヴァー・フェニックスとキアヌ・リーヴス。特にリヴァー・フェニックスの繊細な演技が高く評価され、彼の代表作の一つとなった。
ストーリー
マイク・ウォーターズ(リヴァー・フェニックス)は、ナイトクラブやストリートで体を売って生きる青年。彼は重度のナルコレプシーを患い、極度のストレスや疲れで突然眠りに落ちてしまう。そんな彼には一つの願いがあった——生き別れた母を探し、家族を取り戻すこと。
マイクの親友であり、同じストリートで暮らすスコット・フェイヴァー(キアヌ・リーヴス)は、裕福な市長の息子。しかし、彼は父の権力に反発し、ストリートに身を投じ、売春や盗みを繰り返しながら放浪生活を送っていた。彼にとってこれは「遊び」にすぎなかったが、マイクにとっては現実そのものだった。
二人は旅を続けながら、マイクの母の行方を追い求める。アイダホからポートランドへ、そしてローマへと旅をするが、母の影は掴めない。途中、スコットはイタリアで女性と恋に落ち、家庭のある世界へ戻ることを選ぶ。一方のマイクは、変わることのない自分自身と、どこにも行き場のない孤独と向き合うことになる。
やがて、スコットはかつての放浪仲間を捨て、富裕層としての人生を歩み始める。一方、マイクは再びアイダホの広大な道の上で倒れる。誰も彼を助ける者はおらず、彼の旅は続いていく——どこへ行くのかも分からないままに。
エピソード
リヴァー・フェニックスの即興演技
マイクがスコットに対して「愛している」と告白するキャンプファイヤーのシーンは、リヴァーがほぼ即興で演じたもの。ガス・ヴァン・サント監督は、彼のリアルな感情表現に圧倒された。
キアヌ・リーヴスとリヴァーの友情
2人はプライベートでも親友であり、リヴァーの家族とも親しい関係だった。
キアヌが脚本をもらいにバイクで向かった
ガス・ヴァン・サントがキアヌに脚本を渡すため、彼の家に郵送しようとしたところ、キアヌはバイクで数百マイルを走って直接受け取りに行った。
リヴァーの脚本への介入
彼は自身の役に深く関わり、脚本の一部を自ら書き直したり、セリフをアレンジした。
ナルコレプシーのリアリズム
リヴァーはナルコレプシー患者の記録映像を見て、リアルな発作の演技を習得した。
イタリアでのロケ
ローマのシーンはゲリラ撮影で、実際の路地や民家の前で許可なしに撮影されたものもある。
マイクとスコットの対比
シェイクスピアの『ヘンリー四世』のフォルスタッフと王子ハルの関係がベースになっている。
低予算の撮影
わずか250万ドルの予算で作られたが、その後カルト的人気を得ることになった。
映画のオープニングはリヴァーのアイデア
広大な道路で倒れるマイクのシーンは、リヴァーが「物語のすべてを象徴する」と考え、提案したもの。
ストリート・キッズのリアルさ
実際にポートランドのストリートで暮らしていた若者たちがエキストラとして出演。
リヴァーの母が撮影現場に訪れる
彼の母アーレン・フェニックスは撮影を見守り、彼の演技に涙を流した。
マイクの父の正体
映画では語られないが、原作脚本ではマイクの父親が母を捨てた裕福な男であることが示唆されていた。
劇場公開時の評価
当初はアート映画として受け止められたが、LGBTQ映画としての評価も高まり、後に名作とされるようになった。
リヴァーの影響でキアヌが役にのめり込む
リヴァーの演技を見て、キアヌもより感情的に役を深めるようになった。
バイクシーンの危険
キアヌがマイクをバイクに乗せるシーンはノースタントで撮影され、リスクが高かった。
音楽の選曲
U2の『All I Want Is You』が印象的に使われ、映画の儚さを際立たせた。
リヴァーの伝説的なパフォーマンス
彼の演技は、後のLGBTQ映画やインディペンデント映画に大きな影響を与えた。
映画化に10年
ガス・ヴァン・サントはシェイクスピア劇と現代のストリートを融合させる構想を長年温めていた。
マイクの最期のシーン
マイクが路上で倒れ、車が彼を拾っていくラストは、「救われたのか、それとも売られたのか」解釈が分かれる。
リヴァーの死後、より評価が高まる
1993年にリヴァー・フェニックスが急逝し、本作は彼の代表作として語り継がれることになった。
感想
リヴァー・フェニックスの演技が圧倒的で、マイクの孤独や痛みが画面越しに伝わってきた。キアヌとの関係性も美しくも切なく、特にキャンプファイヤーのシーンは忘れられない。放浪し続けるマイクの姿が胸に刺さり、どこか儚い余韻を残す映画だった。
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