インディアン・ランナー
The Indian Runner
(アメリカ・日本 1991)
[製作総指揮] スティーヴン・K・バノン/マーク・ビスガイア/トム・マウント
[製作] デヴィッド・シャムロイ・ハンバーガー/パトリシア・モリソン/ショーン・ペン/ドン・フィリップス
[監督] ショーン・ペン
[原作・脚本] ショーン・ペン
[撮影] アンソニー・B・リッチモンド
[音楽] ジャック・ニッチェ
[ジャンル] ドラマ
デヴィッド・モース (ジョー・ロバーツ)
ヴィゴ・モーテンセン (フランク・ロバーツ)
ヴァレリア・ゴリノ (マリア)
パトリシア・アークエット (ドロシー)
チャールズ・ブロンソン (ロバーツ;父)
サンディ・デニス (ロバーツ夫人)
デニス・ホッパー (シーザー)
ジョーダン・ローデス (ランドール)
エンゾ・ロッシ (ラファエル)
ベニチオ・デル・トロ (ミゲル)
「インディアン・ランナー」は、ショーン・ペンが監督と脚本を務めたドラマ映画で、彼の監督デビュー作でもある。映画はブルース・スプリングスティーンの楽曲「Highway Patrolman」にインスパイアされており、1960年代のアメリカを舞台に、異なる性格を持つ二人の兄弟の葛藤を描いている。主演はデヴィッド・モースとヴィゴ・モーテンセン。
映画は、帰還兵のジョー・ロバーツ(デヴィッド・モース)と彼の問題を抱えた弟フランク・ロバーツ(ヴィゴ・モーテンセン)の物語を描いている。ジョーは地元の警察官として安定した生活を送っているが、フランクはトラブルに巻き込まれやすく、暴力的な性格で、自制心に欠けている。フランクが帰郷することになり、二人の兄弟は再会するが、家族の再会は一筋縄ではいかない。
フランクはベトナム戦争から帰国後、犯罪に手を染めるようになり、ジョーはそんな弟を助けようとする。ジョーは弟の行動に苦悩しながらも、家族としての義務感から彼を守ろうとする。一方、フランクは自分の人生を制御できないことに苛立ち、自らの居場所を見つけられずにいる。
フランクの帰還により、ジョーの家族との間に緊張が生じ、ジョーの妻マリア(ヴァレリア・ゴリノ)との関係にも影響を及ぼす。ジョーはフランクを救いたい一心で行動するが、フランクの暴力性やトラブルを引き起こす傾向は、兄弟の関係をますます複雑にしていく。
ショーン・ペンの監督デビュー作:
ショーン・ペンはこの映画で監督デビューを果たし、彼の演技だけでなく、監督としての才能も示した。
ショーン・ペンの情熱:
ペンはこの映画を制作する際、スプリングスティーンの「Highway Patrolman」に深く感動し、映画化の権利を自ら取得。ペンは脚本も担当し、音楽の世界観を忠実に映像化した。
ヴィゴ・モーテンセンの役作り:
フランク役を演じたヴィゴ・モーテンセンは、役に入り込むために心理学的なリサーチを行い、キャラクターの複雑な心理状態を深く探求した。また、撮影中に実際に作中のような生活環境で過ごすことで、役柄への理解を深めた。
デヴィッド・モースの献身:
ジョー役のデヴィッド・モースは、フランクとは対照的な兄を演じるために、現実の警察官の生活を観察し、キャラクターの現実感を高めた。モースは役に対する深い理解と真摯な姿勢で知られている。
キャスティングの工夫:
ショーン・ペンは、キャストの相性を重視し、デヴィッド・モースとヴィゴ・モーテンセンの相性を特に考慮してキャスティングを行った。結果として、二人の間に生まれた自然な緊張感が映画の核心を形成している。
1960年代のアメリカ:
映画は1960年代のアメリカを舞台にしており、その時代の社会的背景が物語に影響を与えている。
撮影場所:
映画の多くはネブラスカ州で撮影され、その広大な風景が物語の舞台となっている。
音楽の使用:
映画のサウンドトラックは、ブルース・スプリングスティーンの楽曲だけでなく、1960年代の雰囲気を強調するための選曲がされている。
映画の評価:
「インディアン・ランナー」は、批評家から高く評価され、特にショーン・ペンの監督としての手腕とキャストの演技が称賛された。
スタッフとの協力:
ショーン・ペンは撮影現場での協力関係を重視し、特に撮影監督のヴィレモス・ジグモンドとの連携を強化。ジグモンドの映像美学が映画のビジュアルスタイルに大きな影響を与えた。
映画制作の挑戦:
低予算での制作にもかかわらず、ショーン・ペンはクオリティを妥協せずに、映画のリアリズムと感情の深みを追求した。この取り組みが批評家からの高評価につながった。
インディペンデント映画としての意義:
「インディアン・ランナー」は、1990年代初頭のインディペンデント映画ブームの中で際立った作品の一つとされ、特にキャラクター描写とリアリズムの追求が特徴的とされた。
「インディアン・ランナー」は、兄弟の複雑な関係を通して、家族愛と葛藤を描いた深いドラマ映画だ。ショーン・ペンの監督デビュー作として、彼の鋭い視点と感情的な演出が光る。デヴィッド・モースとヴィゴ・モーテンセンの演技が特に際立ち、兄弟の間にある愛と緊張をリアルに伝えている。
映画は1960年代のアメリカを背景に、帰還兵としてのフランクのトラウマや社会からの疎外感、そしてジョーの家族を守りたいという葛藤を描いている。全体的に、深い感情的なテーマと優れた演技が融合し、観客に強い印象を残す作品となっている。
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