奥様は魔女
I Married a Witch
(アメリカ 1942)
[製作] ルネ・クレール/プレストン・スタージェス
[監督] ルネ・クレール
[原作] ノーマン・マットソン/ソーン・スミス
[脚本] ロバート・ビロッシュ/マルク・コヌリー/アンドレ・リゴー/ダルトン・トランボ
[撮影] テッド・テツラフ
[音楽] ロイ・ウェッブ
[ジャンル] コメディ/恋愛/ファンタジー
フレドリック・マーチ
(ジョナサン・ウーリー/ナサニエル/サミュエル/ウォレス)
ヴェロニカ・レイク
(ジェニファー)
ロバート・ベンチリー (Dr.ダドリー・ホワイト)
スーザン・ヘイワード
(エステル・マスターソン)
セシル・ケラウェイ (ダニエル)
エリザベス・パターソン (マーガレット)
ロバート・ウォーウィック (J・B・マスターソン)
『奥様は魔女』は、1942年に公開されたロマンチック・ファンタジーコメディ映画。監督はルネ・クレールで、主演はヴェロニカ・レイクとフレドリック・マーチ。映画は、17世紀に火あぶりにされた魔女が、現代に蘇って復讐を果たそうとするものの、次第に恋に落ちてしまうという物語を描いている。この作品は、軽妙なタッチと幻想的な演出で、当時の観客を魅了した。
物語は、17世紀のニューイングランドで、魔女ジェニファー(ヴェロニカ・レイク)とその父ダニエル(セシル・ケラウェイ)が、ピューリタンのジョナサン・ウーリー(フレドリック・マーチ)によって火あぶりにされるところから始まる。死の間際、ジェニファーはウーリー家の子孫たちが「必ず不幸な結婚をする」という呪いをかける。
数百年後、1940年代に入った頃、ウーリー家の子孫であるウォレス・ウーリー(フレドリック・マーチ)は、州知事選に立候補し、裕福な家の娘エステル(スーザン・ヘイワード)との結婚を控えている。ところが、雷が古い木に落ちたことで、ジェニファーとダニエルの魂が解放され、ジェニファーはウォレスに復讐するために再び人間の姿を取る。
ジェニファーは、ウォレスを誘惑し、彼の婚約を台無しにしようとするが、誤って自分が仕込んだ愛のポーションを飲んでしまい、ウォレスに恋をしてしまう。ウォレスはジェニファーに惹かれつつも、彼女の魔力に疑念を抱き、彼女を拒絶しようとするが、次第にその魅力に抗えなくなっていく。
原作の背景:
この映画の基になった小説は、作家ソーン・スミスによって執筆されたが、スミスは執筆途中で亡くなり、友人のノーマン・マトソンが完成させた。小説は1941年に出版され、ベストセラーとなった。
キャスティングの苦難:
当初、ウォレス・ウーリー役にはジョエル・マクリーがキャスティングされていたが、ヴェロニカ・レイクとの前作での不仲が理由で降板。フレドリック・マーチが代わりに選ばれた。しかし、マーチもレイクとの共演を嫌っており、二人の間には絶えず緊張があった。
現場でのいたずら:
ヴェロニカ・レイクは撮影中にフレドリック・マーチに対して悪ふざけを繰り返し、特に重さ40ポンドの重りをドレスに仕込んでマーチに持ち上げさせたり、あるシーンでは彼の股間を足で押したりと、共演者を困らせたという。
プロデューサーの離脱:
映画のプロデューサーだったプレストン・スタージェスは、監督のルネ・クレールとの意見の相違から途中で制作を離脱。スタージェスはクレールの芸術的なビジョンに不満を持ち、クレジットから自分の名前を外すことを望んだ。
映画の売却:
この映画は当初パラマウント・ピクチャーズによって制作されたが、同社が他の映画作品を抱えすぎていたため、ユナイテッド・アーティスツに売却され、1942年10月30日に公開された。
視覚効果:
映画に使われた特殊効果は、当時としては画期的で、ヴェロニカ・レイクのエーテルのような美しさを際立たせるために工夫が凝らされている。
音楽:
映画の音楽は、作曲家ロイ・ウェッブが担当し、第15回アカデミー賞で「ドラマティックまたはコメディ映画のための音楽賞」にノミネートされた。
『奥様は魔女』は、ルネ・クレールの繊細でユーモラスな演出が光る作品で、ヴェロニカ・レイクの魅力が最大限に引き出されている。特に、レイクの魔女ジェニファー役は、彼女のミステリアスな美しさと相まって観客を惹きつけた。一方で、フレドリック・マーチの演技については、コメディ向きではなく、やや固いと感じる批評もあった。二人の不仲が映画に影響を与えたことは否めないが、それでも全体としては、幻想的で軽妙なコメディとして高く評価されている。
映画の特殊効果や視覚的な美しさは、当時の観客にとって新鮮であり、ストーリーの展開もテンポ良く進む。現代の視点ではやや時代を感じさせる部分もあるが、その時代特有のチャーミングな魅力を持った作品である。
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