誰が為に鐘は鳴る
For Whom the Bell Tolls
(アメリカ 1943)
[製作総指揮] バディ・G・デシルヴァ
[製作] サム・ウッド
[監督] サム・ウッド
[原作] アーネスト・ヘミングウェイ
[脚本] ダドリー・ニコルズ
[撮影] レイ・レナハン
[音楽] ヴィクター・ヤング/ウォルター・ケント
[ジャンル] アドベンチャー/恋愛/戦争
[受賞]
アカデミー賞 助演女優賞(カティーナ・パクシヌー)
ゴールデン・グローブ賞 助演男優賞(アキム・タミロフ)/助演女優賞(カティーナ・パクシヌー)
ゲイリー・クーパー
(ロバート・ジョーダン)
イングリッド・バーグマン
(マリア)
アキム・タミロフ (パブロ)
アルトゥーロ・ド・コルドワ (オーガスティン)
ウラジミール・ソコロフ (アンセルモ)
ミハイル・ラスムニー (ラファエル)
フォーチュニオ・ボナノワ (フェルナンド)
エリック・フェルダリー (アンドレ)
カティーナ・パクシヌー (ピラー)
『誰がために鐘は鳴る』は、1943年に公開されたアメリカの戦争ドラマ映画。監督はサム・ウッド、主演はゲイリー・クーパーとイングリッド・バーグマン。映画は、アーネスト・ヘミングウェイの同名小説を原作としており、スペイン内戦を舞台に、共和派に参加したアメリカ人のロバート・ジョーダン(ゲイリー・クーパー)が、重要な橋を爆破する任務に挑む中で、愛と葛藤を経験する様子を描いている。
ロバート・ジョーダンはスペイン内戦に参加し、共和派側のゲリラ部隊と共に戦うアメリカ人兵士。彼は戦争の重要な局面で、敵の進軍を阻止するために戦略的に重要な橋を爆破する任務を与えられる。彼はそのために、山中のゲリラ部隊に接触し、協力を得ようとする。
部隊のリーダーであるパブロ(アキム・タミロフ)は初めは協力を渋るが、妻ピラール(カティーナ・パクシヌー)の説得により、渋々同意する。一方で、ロバートは部隊の一員である若い女性マリア(イングリッド・バーグマン)と深い愛情を育むようになる。しかし、橋の爆破計画が進む中で、彼らは次第に不安定な状況に追い込まれ、パブロの裏切りの可能性が彼らに大きな影響を与える。
イングリッド・バーグマンの人気:
映画『カサブランカ』の直後にこの映画に出演したイングリッド・バーグマンは、この役でさらに人気を高めた。彼女の演技は観客にも批評家にも絶賛され、彼女のキャリアにとって重要な作品となった。
撮影地の選択:
映画はカリフォルニアのシエラネバダ山脈で撮影されたが、本来の設定はスペインの山岳地帯。壮大な自然が映画の背景を際立たせ、戦争の厳しさとロマンスの対比を鮮やかに描き出している。
カティーナ・パクシヌーのオスカー受賞:
ゲリラの女性リーダー、ピラールを演じたカティーナ・パクシヌーは、アカデミー賞助演女優賞を受賞。この役柄は彼女の強烈な演技で観客に強い印象を与えた。
映画の長さと編集:
映画は元々170分の長尺で公開され、その後いくつかの再編集が行われた。1990年代にアーカイブ版が復元され、そのバージョンが現在最も広く知られている。
映画と政治的テーマ:
『誰がために鐘は鳴る』は、アーネスト・ヘミングウェイの原作に基づいており、スペイン内戦の背景が強く反映されている。当時、アメリカの映画業界は、スペイン内戦を取り上げることに慎重であり、政治的なメッセージが強すぎると批判される可能性があった。プロデューサーのサミュエル・ゴールドウィンは、映画の制作中にこの点に注意を払い、作品の政治的な側面を薄めるようにした。
ヘミングウェイの関与:
アーネスト・ヘミングウェイは、自身の小説が映画化される際に強い関心を持っていた。彼は映画のキャスティングにも口を出し、特にロバート・ジョーダン役にはゲイリー・クーパーを希望していた。彼の願い通り、クーパーがキャスティングされ、ヘミングウェイもこの選択に満足していた。
イングリッド・バーグマンのヘアスタイル:
バーグマンはマリア役のために髪を短くし、映画の中で少年のような外見を演出した。このヘアスタイルは当時のファッションに影響を与え、多くの女性がバーグマンを真似て髪を切ったと言われている。
マリア役の難しさ:
イングリッド・バーグマンはマリア役を演じる際、感情的なシーンに非常に苦労したと言われている。特に、彼女の過去のトラウマに関するシーンは、バーグマンにとって演技の挑戦であり、彼女はこの役を通じて俳優としての幅を広げた。
『誰がために鐘は鳴る』は、その壮大なスケールと深い人間ドラマが高く評価されている。ヘミングウェイの原作が持つ政治的、思想的なテーマを忠実に描写しつつ、戦争の中で生まれる人間関係と感情の複雑さを強調している。ゲイリー・クーパーとイングリッド・バーグマンの演技は特に称賛され、映画は興行的にも成功を収めた。戦争映画でありながら、ロマンスと人間ドラマが中心に据えられており、そのバランスの良さがこの映画の魅力となっている。
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